北九州のインプラント治療


財界九州2006年2月号掲載記事紹介 2006.1.10 


「歯は命」とよく言うが、歯を失うと食べ物を噛みにくくなるばかりか、精神的な苦痛を伴い消化不良などで運動能力まで低下するケースが少なくない。入れ歯やブリッジに次ぐ「第3の歯」と言われるインプラント治療法について先進の治療に取り組む中島幹雄・福岡和白病院歯科インプラントセンター長と香月武・佐賀医科大学名誉教授(同センター最高顧問)に語り合ってもらった。

香月 武
  • 佐賀医科大学名誉教授
  • (社)日本口腔インプラント学会指導医
  • (社)日本口腔外科学会指導医
  • 医療法人 恵祐会 最高顧問
中島 幹雄
  • 医療法人財団池友会福岡和白病院歯科
    インプラントセンター長
  • (社)日本口腔外科学会認定・口腔外科専門医

あごの骨と一体になり限りなく自然歯に近づく
中島
インプラントは歯が抜けてしまったあとに人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける方法です。これまでの歯科医療とは異なり、1本から全ての歯を無くしたケースまで、状態に応じて最適な治療法を選べます。歯根の原料は安全性が確認された純チタン製が主流で、歯根を埋め込むあごの骨と結合することが確認されています。
香月
この治療が本格化したのは20年ほど前ですが、それまであごの骨に合金の歯を乗せる「骨膜下インプラント」があり、安定せず不完全でした。現在行われている「骨内インプラント」は人工歯根があごの骨と一体化するので限りなく自然の歯に近く、食べ物を従来と同じ感覚でかむことができます。固い物を十分にかめて、味も感じることができるなど違和感がなくなり、大変安定感があります。
中島
それに部分入れ歯や総入れ歯のような取り外しや食べ物が間に挟まるわずらわしさ、人前で外れる不安などが解消されますし、人工歯を他の歯で支えるブリッジのように正常な歯を削って傷つけることも無くなります。入れ歯やブリッジに比べ、耐用年数が倍以上の10年を超えることが実証されています。

地域医院との連携 サポート体制組む
中島
治療は外科手術が中心です。具体的には
  1. 局所麻酔をかけて歯肉を切開し、あごの骨に穴を設けてインプラントを入れ再び歯肉を閉じる
  2. 骨と結合したら人工歯を取り付けるため、インプラントに部品を連結させる。
  3. そこに仮歯をはめ込む
  4. 仮歯をとって最後に人工歯を装着する。

といった手順です。インプラントと骨の結合に月日がかかるため、治療期間は早くて2ヶ月、最長で6ヶ月は必要になります。インプラントを埋め込む部分のCTを撮ることであらかじめあごの骨の状態や神経の位置等を精査します。また、口全体のレントゲンや血液検査、心電図、尿検査などで体の状態を掌握します。この診断に基づいて計画を提示し、手術に移るわけです。

香月
手術自体はそう難しい内容ではないのですが、患者さんはより確実な治療を行うために、設備がきちんと整った医院や腕のいい医師を選ぶことが重要です。一方医師は医学的な見地から患者さんの健康状態を十分に知り尽くした上で事前に治療内容を説明するなど、信頼関係を大切にしながら治療を進めて行くことが求められます。
中島
幸い、当センターは地域最大規模の総合病院(320床)である和白病院に付設しており、最新の設備が整っています。従って手術は無菌を保つ必要から同病院の手術室で行い、これを生かして最適な治療プロセスを組み込むことが出来ます。埋め込むあごの骨が足りないという難点がある場合もこの場所を使って骨を移植しますし、入院も可能です。ただ骨粗しょう症や糖尿病などの一定の疾患をお持ちの方は、症状に応じて治療に制約があります。診断や手術についても、患者さんの理解を優先して進めています。地域の医院から紹介を受け、治療が終わったら元の医院に戻すといったサポート体制も組んでおり、こうした連携を図る医院を現在募っているところです。

手術後の手入れも注意すべきポイント
中島
インプラントの寿命は他の治療に比べると確かに長いのですが、耐久期間は術後の手入れの仕方で決まるといっても過言ではありません。3ヵ月に1回か半年に1回の定期検診で汚れをチェックして歯をブラッシングする、患者さん個人で毎日臼歯をこまめに磨くといったケアが欠かせません。当センターのアフターケアでは、インプラントの細菌感染から、かみ合わせに至るまで口全体を見ています。
香月
ご指摘の通り、細菌感染によるインプラントの歯周病を予防するためにも、術後の手入れは当然必要になります。特に、たばこは歯と歯肉の状態を悪化させる大きな要因の1つです。禁煙が最良ですが、せめて手術前後の1カ月は吸うのをやめていただきます。ですから、こうした約束事をしっかり守ることも治癒までの重要なポイントになります。
 それに、手術は医師の技量に差があるのも事実。術後のかみ合わせが悪ければ骨がもちません。仮にインプラントをそう入する位置を少しでも間違えば、下あご骨の中にある神経を損傷することもあるので、医師は技量の向上はもちろんのこと、細心の注意を払わなければなりません。
中島
付け加えますとインプラントは保険が適用されません。治療内容によって異なりますが、歯根と人工歯の本体だけで費用が通常30万円以上はかかります。
香月
インプラントは歯ばかりか精神的、肉体的にも改善効果があり、年齢に上限がありません。70代の男性から「コルフボールがよく飛ぶようになった」と大変喜んでいただくくらいです。患者数は増え続けており、社会的責任はますます重くなっているといえるでしょう。
中島
患者さんの要望に応えられるよう、これからもインプラントの発展に尽くしていきます。



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